「ひきこもり」をテーマにした映画『扉のむこう』(2010年日本公開)。イギリス人のローレンス・スラッシュ氏が監督・脚本を務め、 献身的に世話をする家族や支援者などへの取材に基づいて製作した。 なぜ、“日本のひきこもり”を映画にしようと思ったのか。「知ったきっかけはイギリスのガーディアン紙だった。 『日本特有の現象が起きている』と。ひきこもりの状態が長期にわたり続いているということに驚いた」と語る。 同じような状態の人は世界各地に存在し、今や「hikikomori」は世界の共通言語に。ただ、同じ呼び方であっても、日本と世界でその実態は大きく異なるという。 イタリア出身で、今は日本で精神科医として働くパントー・フランチェスコ氏は、「日本の極端な例を見ると、 不登校から始まって60歳を超えるひきこもりの人がいたり、かなり珍しいと思う」と、“長期化”を特徴としてあげる。 ローレンス監督が取材を通して日本に感じたのは、まず当事者に“寄りそう姿勢”が強いこと。食事を運ぶなど家族が献身的に世話をしたり、 支援者も本人の意思を丁寧に確認する。もう1つが、「家族で何とかする」という考え。ひきこもったのは家族の責任という罪悪感も生まれ、 「ひきこもり対策は長丁場になる」と無意識に思い込んでしまうという。 また、そうした家庭内にあるさまざまな“課題”についても触れる。「多くの場合、母親がフルタイムで世話をする係になり、 自分自身も孤立してしまう。“秘密裏に保つ”ことが必要なので、母と息子が共依存関係のような、トラップにはまり込んでしまっている感じがした。 父親も“不在”の状態で、役割としてもそうだし、どうやって助けたらいいかが理解されていない。あまりにも仕事から圧力がかかっていて、それに一生懸命だ。 日本の伝統的な家族の構成・線引きが、近代においては難しい状態になっていると思う」。 https://news.yahoo.co.jp/articles/10a0b911c4ec809bd12d2eaf08a45ec0b9a02e05