冬に流行する感染性胃腸炎や食中毒の原因の多くを占めるノロウイルスの勢いが春になっても収まらない。2月以降、患者数が過去10年で最多のペースが続いており、 専門家は新しいタイプのウイルスが海外から入り、流行が長引いている可能性を指摘。子どもや高齢者は重症化するケースもあり、警戒が必要だ。 https://www.yomiuri.co.jp/medical/20250422-OYT1T50115/ 感染性胃腸炎の大半はノロウイルスが原因とされる。感染力が強く、学校や職場で一気に広がりやすい。 嘔吐おうと や下痢、発熱などの症状を伴い、 特に高齢者は吐いた物で喉を詰まらせたり、肺炎を併発したりして死亡することもある。 冬は寒さで免疫力が下がり、ウイルスに感染しやすい。食中毒を引き起こすカキのシーズンにも重なり、10月頃から患者数が増え、 12月から1月にかけてピークを迎えるが、今年は状況が異なっている。 国立健康危機管理研究機構(JIHS)の集計では、全国約3000か所の定点医療機関から報告された今年の患者数が、例年であれば減り始める2月に入って急増。 3月3〜9日の1週間には1医療機関あたり11・39人に上って過去10年の同時期平均の2倍となるなど、最多ペースで推移している。 この要因について、北里大の片山和彦教授(ウイルス学)は「二つのタイプのノロウイルスが流行の継続を後押ししている」と話す。 ノロウイルスには複数の遺伝子型が知られる。JIHSのデータなどによると、国内では2000年頃から「G2・4」と呼ばれるタイプが主流だったが、 海外で流行している「G2・17」が近年、国内の患者から検出されるようになった。 訪日観光客の急増で、海外から流入しているとみられ、国内ではこの新しいタイプのウイルスに免疫を持たない人が多く、感染拡大につながっている可能性があるという。 ノロウイルスによる集団食中毒も3月以降、全国で相次いでいる。 3月12日には松江市のホテルで会席料理を食べるなどした97人が嘔吐などの症状を訴える食中毒が発生。今月9日にも栃木県栃木市の 仕出し業者が調理した弁当を食べた312人が発症し、うち80歳代の男性1人が死亡した。カキなどの二枚貝に付着したウイルスは85度以上で、90秒以上加熱すれば死滅するとされる。 片山教授は「今後、大型連休などで人の往来が増える時期となり、感染が広がる可能性がある。警戒を続けてほしい」と呼びかけている。